道の上に少女が立っていて過去を責めるのだ
あるいは怒りを持てと叱咤激励する
底の見えない闇のような眼でこちらを凝視して言うのだ
辛いことを忘れ 悲しいことに目を伏せ
苦しみに耐え 痛みに笑おうとしても
心や体が壊れていくだけだと何度知ってもまだ分からないのかと
死にたいと思う気持ちすら持てないほどに壊れ果ててもまだ
なぜ他人を信じようとするのかと


僕はその声を振り切って走る 冬の光の中を走る
きらきらと光る川面を横目に見ながら透き通った空気の中に溶けていこうとする
信じることをやめてはだめなのだ
他人を事実を嘘をそして自分自身を、信じることをやめてはだめなのだ
信じるから、信じきるから、たとえ破壊されつくしてもぼくは生きているのだ 死ななかったのだそう知っているから
怒りを持つ代わりにそれらをのみこもうとする


さよならを何度告げただろう それでも心はその名を呼ぶことをやめない
新しい感情に心が揺れても まだあの厳冬の中に立ち尽くしている
あの晩秋の中で頭を垂れている あの初夏の光の下で空を仰いでいる
それでも信じることはやめない 信じ続けずにはいられない
あらゆる人を 関わる人々を そのすべてを 信じることを
ぼくは君を憎むだろう 
君が僕をもう忘れていると信じて、それでも君は生きていけると信じて 
そして君を憎むだろう
君を指折り数えて待った日々を 忘れないように心に刻みつけて