深いところに今も横たわっている人間不信について考えている。考える日もある。気分が沈むのでそう多くはしないが、しかしやはり対人関係で踏み込むのをためらうときや踏み込まれるのに拒否感を覚えるときにそれについて考える。深く黒く底の見えない闇のようでありながらあたたかく、ちぎれることのない緩衝材のようでもあるそれについて。
あなたはきっと私のもとを去っていくだろう。
あなたはきっと私を利用するだろう。利用するために今ここにいるのだろう。
その思いが強くなったり弱くなったりしながら僕を取り巻いている。そして僕はまた動き出せなくなる。何もかも投げ出して受け止めようという気持ちになるたびに底の方にいるそれが急にせり出してきて、傷つく前に僕を取り巻いてしまう。僕は傷ついてもいいと思っているのにそれが僕を包んでしまう。あるいは、傷つきたくなくて隠れようとすると、なぜか雲が晴れるように消えて僕は鋭い切っ先の前に無防備に自分自身を曝さねばならなくなる。人間不信はそれ自身が消えないようにたぶん僕をコントロールしているのだろう。定期的に僕が人間不信になるようにしかし僕自身が死んでしまうほど追いつめられないように。僕は僕でそれに頼りきりになっている。自分自身の中にいる他人、人間不信。それとの共依存関係。
あぁでも僕は時々、あなたを心の底から信じたいと思うよ。