発表資料Tips

というわけでTips的な話をするよ。

  1. スライドを作ったから話しができるのではない、話したいことがあるからスライドができるのだ
  2. 話は大きいほうから小さいほうへ、マクロからミクロへ、上位層から下位層へ
  3. 相手になぜだろう、を残させない
  4. スライド作成のテクニック

の四本立てです(誰得

スライドを作ったから話ができるのではない、話したいことがあるからスライドができるのだ

これは営業の人たちがとてもうまいんだよなあ。
話には流れ、というものがある。起承転結などともいうが、そこまででなくてもよい。出発地点があり、ある目的を持って到達地点へ向かう。そういう目的意識を持って話をする。雑談ではない話というのはそういうものだ。必ず目的がある。目的というのは伝えたいことである。


よくあまり発表に慣れていない人ので見かけるのが、スライドを表示して、そこに書いてある文章を説明する、というのがある。スライドに表示している文字を読むだけよりは良いけれども、あくまでもスライドの説明にとどまっている、そういう発表。
スライド自体が非常にうまくできているものであれば、スライド一枚一枚を丁寧に説明していくことで、全体的な像はおぼろげには表れてくるだろう。しかしそういう発表をする人というのは残念ながら、本当に残念なのだが、細かい話をしたがる人が多いのである。したがって、流れは非常にしばしば分断され、観客からは筋のわかりにくい話が延々と続いているように感じられる。どこへ向かっているのか、いま話していることが全体でどのくらいの比重を占めている話なのか、全く分からない。観客はあきらめる。これはわからないもしくはきっと難しい話をしているんだろう、と。

  • 目的をはっきりさせる
  • 話す対象を分析して出発地点を決める
  • 話す対象を分析して、話の階層で何層目までを話すか、を決める
  • ストーリーを作る
  • ストーリーの中から不連続な点を抽出する
  • 点と点の間を結ぶようにスライドを作成する

ポイントは以上。
これって結局ソフトウェア開発みたいなもんで、要求分析して、仕様決めて、設計して、それから構築するっていうことなんだよね。こういうプロセスの大切さってのを説く人は多いけど、それを人に伝えるということに関しては応用できていない。少人数なら少人数でその場に出てきた質問に答えつつ流れを修正して話すので、スライドを作る必要性ってのはそんなにない。その場でノートなりホワイトボードなりにちょいちょいと書けばいいから。そういうのはアジャイルとかXPと同じだな*1

話は大きいほうから小さいほうへ、マクロからミクロへ、上位層から下位層へ

さて、肝心な話の作り方だが、「ストーリーを作る」としかかいていない。一体どうすればよいのか。
合言葉は、話は大きい方から小さい方へ、概要から詳細へ、マクロからミクロへ、上位層から下位層へ。人によって言い方は違うが、基本的に言いたいことは全部同じだ。大まかな骨格を失ってはいけないし、その骨格は相手に常に提示し続けなければならない。

俯瞰図、というのは全体を把握するために用いる図である。となれば、話をするときも同じ。
大きいところで全体像をつかんで、目的地を相手にはっきりと示してみせる。いまはここにいるよ、あそこに向かって歩いていくことにするよ、あそこには素敵なものがあるよ、と伝える。それが大きな話。概要ともいう。


ガイドをしながら時々立ち止まって細かい話をしてみたりもする。それは疑問に思う人もいるからだ。なぜその道を選ぶのか、なぜあの道は選ばなかったのか、目的地はわかったが、この道を進んでいけば間違いなくたどり着くのか?という疑問に答えるためには多少細かい話もしなければならない。もしくは目的はわかったけれども、その目的は本当に利益があるのかと気になる人もいるだろう。これは素晴らしいんだ!だからいいんだ!という話をそのまま信じる人というのはあまりいない。信じる人はだまされる(かもしれない)。メリットデメリット両方あるけれども、こっちを選ぶことにするよ、なぜなら…と根拠を示されるとその根拠が間違っていなければ信じられるだろう。まぁこの話の詳しい部分は3つめの方でします。

ここでも結局手順は同じだ。ある区間を決めたその中で俯瞰図を見せる。どの程度の解像度まで降りるかは、相手の理解度や興味によって決めればいい。しかし気をつけなければならないこともある。

  • 階層をごっちゃにしない
  • 話し手は今自分がどの階層にいるかを把握しておく
  • 必要のない情報は説明しなくてよい

こうやってどこまでを話すか、ということに気を配りつつ話を組み立てていく。これで60%くらいのストーリーができる。残りの40%については次で。

相手になぜだろう、を残させない


  • ストーリーの中から不連続な点を抽出する
  • 点と点の間を結ぶようにスライドを作成する

てなことを最初に書いていたことを思い出そう。残りの40%はこの二つだ。骨格を作り、大体の話はかけた。でも面白く無い。なぜだろう。伏線がないか、伏線が回収出来ていないからだ。それを話が飛躍しているとか説明不足という場合もある。

俯瞰図を見ながらたまには立ち止まって細かい話をしてみたりするということを書いたが、相手になぜだろうを残させないと相手の満足度は上がる。しかしなぜだろう、と思うことがない話というのは平坦で面白みがないし、たぶん相手ももう知っていることに違いない。話す意味がない。
なぜだろうと思う話には必ず話に連続しない部分がある。連続しない部分にぶつかったとき、人はなぜだろう、と考える。なぜ話が飛んだのか、何のために飛んだのか、飛び越える間に本当に何も無いのか、飛ばなくてもいい道はないのかあるいはどうやって飛んだのか。

なぜだろう?と思い始めると人の思考はそこで止まってしまって、その先に進んだときについて来れなくなる。騙されて一緒に飛んでくれる程度の距離であればよいだろうし、そこでなぜと思わない集団の可能性もあるから一概には言えないけれども、しかし丁寧に話が飛躍するときの説明をして橋を渡してあげた方が脱落していく人は少なくなる。人によってはそこに断崖絶壁があったことも知らずに落ちていくかもしれない。


しかし少人数であれば、各個人のなぜについてしつこく付き合うことも可能だけれども、大人数を相手にしている場合はそうはいかない。橋をわたってくださいと言っても意固地に動かない人もいる一方であっさりわたって次の話を待っている人もいるかもしれない。そういう時はどうすればいいんだろう。
方法は幾つかあります。

  • 相手の気持を考えて聞かれる前にすべて説明し尽くす
  • 全員の意識をひとつの方向にむけてその方向に関しては納得してもらう

前者にはいくらなんでも限界がありますね。どちらかというと後者のほうがテクニック的には用いられるようです。
ここ不思議だと思いません?だってないんですよ、途切れてるんですよ、なぜだと思います?と言いながら同じ認識を全員と共有する。共有したところでひとつの解釈を述べる。そして、ここから次の地点へ進む理由や利点について解釈から当然導かれる帰結として話す。ここでなぜが発生する場合もあるけれど、ここで発生するなぜについては話しても想像がつきやすいしある程度コントロールすることもできる(もちろんうまくやらないと発散するけど)。全員がとりあえず納得したところで、次の地点へどうやって進むかという方法について述べる。ここで少し細かい話をしなければならないかもしれないけれども、それは必要な部分なのでストーリーに組み込んでやりましょう。

この作業でどの階層まで喋るかについて多少の幅ができてきますが、ストーリーとして破綻していないならよしとします。逆にせっかく展開が期待できるプロットを野放しにして回収しないと聞き手にはフラストレーションが溜まります。伏線はきっちり回収しましょう。



1〜3の作業を繰り返してストーリーが完成します。

スライド作成のテクニック

ストーリーが完成したらスライド作成。スライドの作成はほぼ何も考えなくてもできるはず、なのでポイントだけ列挙します。
基本は、

  • 点と点の間を結ぶようにスライドを作成する

です。ストーリー自体も点と点を結ぶように作成したので自然な流れになるんじゃないかな、たぶん。

さて、ポイント。

  • ひとつのスライドにはひとつの話題
    • 階層が変わるときも必ずスライドを別にする
  • なぜだろう?をタイトルに、結論を本文に。あとは口で説明する。
    • 字は少なくてよい。絵も簡単でよい。
    • 一枚で完結し、そして次のなぜ?を提供する
  • 話しにくい場所があったらストーリーそのものに問題があったからだと考えて調整する
    • しゃべりにくい場所は不連続点として認識していない場所だったり、不連続の理由がきちんとブレークダウンされていない場所です
  • あくまでも、話の補助としてスライドを使い、情報を載せすぎない。でも必要な情報はしっかりと
  • 長く話したいスライドには文字を多く使わない。逆に文字の多いスライドでは話は短くてよい(はず)
  • アニメーションは好き好きだが説明するのに必要なら必要なだけ使う


結局ストーリーを作るところで発表資料作成の95%は終わっている。後は機械的にそれを表示して、おかしいところがあったら修正していくってだけの話。発表資料作成は検証テストに似ている(またそれか)。時間は十分にかけた方が良いと思いますが、ここでの大幅な変更は起こらない、はず。ちょっとおかしなところを修正する程度。


うんまぁとりあえずこんなこと書いてるこのエントリが一番わかりにくいよって話だね!うん!


あとおまけ


今日思ったけど、
「話す人が良くわかってる→説明がうまい」⇒「面白かったしわかりやすかった」
「話す人が良くわかってない→説明がうまい」⇒「なんかだまされた気もするけど納得してしまった。でも面白かった」
「話す人が良くわかってる→説明が下手」⇒「なんか難しいことを話していてよく分からない」
「話す人が良くわかってない→説明が下手」⇒「つまらなかったし聞く価値もない」

になるんだなーと。気を付けたいですね。俺一番下ですけど…(おい

*1:応用情報処理の前なのでそればっかだな