時々悲しくなる明快な理由を僕はまだ見つけられずにいる。にっこりと笑って悲しみをやり過ごすたびに一つ咳をする。夜は深くて、朝は遠くて、でも次の朝が来ないような気がする夜を僕は大切に思っている。永遠に続く夜も悪くはない。ただ静かにすべてが眠りについていく、静かな夜も悪くない。
悲しくなるたびににっこりと笑う。腹が立つたびに声を立てて笑う。僕の心の内をあまり知らない人は、いつも楽しそうだね、と僕に言う。僕の外面を知らない人はいつも辛そうだね、と僕に言う。そのどちらでもないけれど、どちらでもある僕は何も言わない。何も言えない。語るべき言葉を持たないということの悲しさを僕はいつまでたっても忘れていくことができない。