暗闇は静かだ。膝を抱え殻にこもってしまえば誰からも邪魔をされることはない。目が見えないのもほんの少しの間だけだ。ほんの僅かな光の粒がありさえすれば、なにもかも視えるようになる。その輪郭ははっきりとはしないが、はっきりとしないおかげで嫌なものは見なくてもよい。彼はそんな世界に生まれ、そしてそこで育った。しかし、彼は眼球を刺し、体を灼く熱に耐えて光の中へ出てきたのだ。恐怖に尻込みすることもあっただろう。でも彼はやってきた。闇と同じように光にもいずれ慣れると、彼はその身を持って教えてくれた。
何度でも彼は応えるだろう。何度落ちても彼は這い上がるだろう。そこに知りたいものがあるから。そこに待つ人がいるから。そこが、あたたかいことを知っているから。