読書も禄にしない十年を越え、僕の感覚は変わった。
十年前、唐突に目の前の透明な壁が消え、頼りない冷たい風が吹く冬の中に僕は放り出されたのだった。あれからいろいろなことがあった。ひとつだけ確かなのは、僕が変わったということだ。感覚は研ぎ澄まされ、言葉が鋭くなった。腹の奥から言葉を掬い上げる時、ある確固たる重みをもってそれを選択することができるようになったのだ、と思っている。