僕達はつい、ここちの良い物語を求めてしまう。すぐに忘れていけるからだ。
現実では明確な悪人は存在しないし、糾弾された人は改心しないし、出て行った少女は戻っては来ない。人は成長しないし、物事はむしろ悪い方に沈み込んでいくことも、良い方向へ改善していくこともない。ただ世界は在り、沈黙し続けている。だから僕達は忘れたがっている。ここちの良い物語を求め、現実を忘れたがっている。