エンターキーを押してから、はたと僕は気づいた。今の、めんどくさくなかった。
返事はないかもしれなかった。ただ無視されるだけかもしれなかった。僕はそれがわかっていたが、その時はどういうわけか気づかなかった。エンターキーを押してからようやく思い出したのだ。それよりも僕は伝えたかった。君が楽しみにしていたものが世に出ていて、簡単に手に入れることができる、その事実を教えたかっただけだった。返事は特にいらない。かるい、ようけん。
ようやく乗り越えたのだ、と僕は笑いながら麦茶を飲む。すっかり何もかも過去の事になった。だからめんどうくさいと思わなくなった。そのことを少し寂しいと思うけれど、僕はもう泣かなかった。