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協力会社の人たち(平たく言えば派遣さん)から綺麗どころだとかこんなエンジニアほんとにいませんよとか褒められ気を良くしている僕のところに来て、は「よう赤門」といった。とたんにお酒も入って和気あいあいとしていた席がすっと冷えた。
彼は気づかない。場の温度に気づかない。潮が引くようにテーブルについた人たちの顔から笑みが消え、取り繕った笑いに変わったことに気づかない。僕は内心腹を立てる。仕事をしやすくするために撒いた種がやっと芽を出したのに、それを無造作に踏みつけられたような気がした。そして彼はまったく悪気がないのだった。悪気がなく人と人の間に溝を作るところはすこしも変わっていないのだった。そしてすこし乱暴な言葉のやり取りを親しみと認識する。
いやぁ、でもできることってサーバー立ててることくらいですからね、と僕は言い返した。しかもすぐ殺しちゃう。サーバー殺す才能だけはあるんだけどなぁ。おじさんたちは口を半分あいてわらう。そうそう、この人、おおらかというかがさつというか。ええ、ほんと入社したばっかりの頃はよくいじめ……教育していただいて。おじさんは笑いどころを心得ている。コントの合間に挟まる笑い声を演じているように必要なタイミングで必要な量の笑い声をいれる。それが処世術というやつなのかもしれない。でしょうでしょう。細かすぎていじめかと思いましたけど。いやぁ、俺もあれから色々本読んで勉強してね、マネジメントの。ああ、それでやっと人間になったんですね。わっとまたおじさんたちは笑ったが、彼らの前にいた派遣さんたちの屍の上にこの会話があることを、多分知ることはないだろう。