LAND OF MINE

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いまラスベガスにいるんだが、世界中の俗を集めたなんかうすらぼんやりと狂気を感じる街だと思っているところ。



「ヒトラーの忘れもの」予告編

ヒューマニティとはヒロイズムではなく狂気のことだと思う。

今年の映画らしいので一応たたみます(当然ネタバレします)



前からチェックはしていたんだがAAのラインナップに出てきたので見た。ドイツ語音声の英語字幕なので細かいところは間違っているかもしれない。

  • ヒトラーの忘れ物」というタイトルに文句つけてるひとがやっぱり散見されるのだが、英題の”Land of Mine"のMineがダブルミーニングになっているように忘れ物がダブルミーニングになっており、「ヒトラーの」とつけることで第二次世界大戦頃のドイツが関係する話だとわかるので、だいぶ頑張った邦題になっていると思う(作中に細かい説明がないので、タイトルでドイツの話だとわからないと理解できないひとは多いんじゃないだろうか)。ちなみに原題は「砂の下」だそうだが、2015年にLand of Mineというタイトルでドラマが作成されていたため英題が同名になっているようだ。
  • 公式情報が大変詳しくて良いので要参照

hitler-wasuremono.jp

映画制作者の間には、「人間は美しくなければならない」「美しいとは欠点がないことだ」という暗黙の了解が存在します。私は、人それぞれに歴史があるから人間は一人ひとりが興味深いのだと思っています。苦悩や心の傷、内なる悪魔があったって別に構わない。人間の醜悪さばかりを見せるつもりはなかったけれど、醜悪さのなかにこそ自分は何者なのかが見えると思うのです。

http://hitler-wasuremono.jp/about.html
  • 最初ベルギーと間違えてたので???となっていたが、デンマークの話だった。当然デンマークがドイツの保護国ということはしらなかったので、あれは捕虜虐待じゃないか?と思っていたのだが、交戦国でない以上捕虜として滞留させているわけではないので戦争法にはあたらないそうだ。イギリスの悪知恵は怖い。
  • 他の感想で最初に殴られてる少年が持ってるのをデンマークの旗と勘違いしてるひとがいたが、あれはクローケンハイツだと思う。そりゃ激高するだろうな
  • 少年兵の服装の違いが非常に細かく違っていてそういうところに注目するとますますやるせなくなる。何かやると大抵裏目に出るヘルムートはSS、そつなく状況を良い方向に変えるセバスチャンは帽子だけSS、双子は帽子になにもマークがないのでたぶんヒトラーユーゲントで強制徴収されたんじゃないかなという感じ。おとなになったら工場で働くとかレンガ職人になるとか言ってるなかでセバスチャンとヘルムートはそういう話をしてないので、彼らは少なくとも十歳でマイスターコースへ行くような家庭ではなさそう。最後この二人と、元工兵?で戦前に地雷を埋めてた少年兵とあともう一人誰だかよくわかんないけど年長者だったというのは必然なのかなんなのか…
  • セバスチャンは冷静で賢いが、実際のところ正気を保っていたのはヘルムートだけだったんじゃないかと思える。未来の話なんかしてどうなるんだとか、食料探してきたつもりでネズミの糞拾ってきたりとか、もうこんなところにはいられない俺は帰るぞってやろうとして押さえつけられたりとかしてるけど、でもそれがまともな人間だよなぁ、と。年齢が少し上の設定だからなのか?それとも士官だからなのか? セバスチャンは賢く見えるし現実主義だけど、あまりにも状況に適応しすぎているようにみえるのでなんとなくそら恐ろしい。たぶん登場人物の中で一番狂っている。
  • 途中少年兵が二人追加されるが、あれはよく考えると伏線だった。一人はSS、もうひとりはHJだけど地雷設営の経験があるみたいな感じだったので油断をした
  • ちなみに最初の方でこの地雷扱ったことあるやつ、って聞いたときにパラパラと手を上げてるのがいるが、たぶん地雷の設営をやってたんだろうと思われる。要するに戦前はドイツからも部品扱いされ、戦後はデンマーク(というよりイギリス)から部品扱いされていたということだ。強制徴集で。
  • 双子のエピソードが悲しすぎて辛い
  • 全員が体調悪くするのはヘルムートが畜舎にいって、家畜用の餌だと思ってきて拾ったのがネズミの餌だったからである。調子が悪いから休ませてくれというのは双子の兄。環境に適応するのがうますぎると死ぬのかもしれない。
  • 最後にラスムスン軍曹が四人を逃がすが、正規でない方法で逃がせば死んだまたは殺したということでかたをつけられるからではないかと思う。実際その少し前にエベ大尉と言い合いをしてるときにそういうことを匂わせるような会話がある(字幕が早かったのでついていけているかどうかわからないが
  • ちなみに地雷撤去というと継続戦争のサッキヤルヴェン・ポルカのエピソードも思い出しますね。ロシアの兵器は本当に変態だ。

とても興味深いのは、このポルカフィンランド軍事史においても登場することだ。それは継続戦争である。(継続戦争とは第2次世界大戦におけるフィンランドソ連の対立を指す)ソ連軍が撤退したヴィープリをフィンランド軍が奪還してみると、原因不明の爆発が何度もフィンランド軍を不意に襲い、多大なる被害が続出した。その原因はロシア製の地雷で、それぞれの地雷に機能のよくわからない小さい箱がついており、内部には3本の鉄製の回路があった。綿密な調査の結果、フィンランド軍は地雷の仕組みを解明する。この無線地雷はあらかじめ設定されている振動数で三和音が奏でられると、それによって鉄製の回路が振動して爆発を引き起こすのだ。また、その和音の組み合わせもそれぞれの地雷で違うものとなっている。

http://d.hatena.ne.jp/rhb/20160109/p1

地上戦をやるということはこういうことなのだなと思う。