2012-07-30から1日間の記事一覧

抜粋

彼はほとんどなにも残さなかった。記憶すらも、彼は自身の中に消し去って一人森に還ってしまったのだった。自身を消し去りたいと願い続けていた彼がなにも残さなかったことを僕は責める気はなかった。 藍色の空はゆっくりと西へ後退し、山の稜線が赤く染まっ…