いつもより少し早めに出た職場から、空を見上げるとすっかり夏に染まっていた。驚くほどすんだ青い空に眼を細める。
日が長くなり、肌に吸い付くような湿気がまとわりついてくる。どこかとおくから海のにおいがする。

衣替えっていつだっけと聞かれたのはもう二ヶ月も前のことだ。僕は首をかしげて、ろくがつ?と答えた。たずねた人はただ黙った。そして二人で笑った。寒い日だった。


あの時二人で渡った橋を一人で歩いてゆく。芽吹き、勢いを増す季節の中に不意に戻ってきた冬が僕らを笑わせたことを、きっと僕は忘れない。