なんか家遠くなるし結婚とかめんどくさいめんどくさいっていうんだ。ここにきてやっぱりやめるとか言われたらどうしよう、とまるで子供のように彼は言う。僕はそれは別に大丈夫だと思いますけど、と笑う。婚約破棄する場合ってそういう諸手続きとか生活の変化を受け入れるようなめんどくささよりもっと別の大変さがあって、めんどくさいが理由だけじゃとても突破できない。彼は小さな目を丸くして言う。何それ。まるで経験があるみたいに。僕は曖昧に笑って答えない。彼はちょっと背を丸めてごめんね、という。僕はいろいろと説明をするのが面倒で、その誤解を解かない。ただ、やさしい人だなと思うだけだ。