窓ガラスに白い指紋の跡が残っているのを凝然と見つめる。考え事をしている間にいつもの景色が流れ込んできて、僕は出口に向かって歩き始める。暗い、静かな、絶望が足元から現実感を奪っている。小さくため息をついて僕は笑った。笑顔で、できるだけ規則正しい足取りで、明るい店を横目に通り過ぎて、もう何度も通った道のりをただまっすぐに歩いていく。二度目の冬。街燈は少なく、人通りは多くない。一方通行の道を信号も見ず渡り、かじかむ手をポケットに突っ込んで歩く。ただ顔をあげて歩くことしか僕にはできない。
ひときわ明るい街燈の前で立ち止まって僕は右を見、左を見て、街燈を見上げた。そしてため息をつく。
なんだかとても長い道のりを歩いてきたような気がする。いつもの道なのに。