僕はさんかくと呼ばれている。読んでいるのは僕の飼い主だ。僕にご飯をもってきて、僕が散歩に連れていかなければならない飼い主だ。飼い主はよく外に行きたくないというので、僕は綱を引っ張って歩いてやらなければならない。でも時々僕は歩いていると楽しくなって、飼い主のことをすっかり忘れてしまう。飼い主はさみしがって僕を呼ぶ。僕は仕方がないので走って飼い主のもとへ行く。でも、飼い主は僕がやってくると急にそっぽを向いて手のひらを眺めはじめたり、四角い黒いもので顔を隠してしまったりする。よくわからないやつだ。それが僕の飼い主だ。
飼い主は僕をさんかくと呼ぶ。よくそういってるからきっとそうなんだろう。僕は賢いから、それが「なまえ」というものだってことを知っている。飼い主は「おのださんゆうびんです」とか「おのださんそくたつですよ」とか「おのださんっきゅびんぇぇす」とか言われてるから、きっとそれが名前なんだろう。でも長いから、僕はおのださんと呼んでいる。多分あんまり間違ってないと思う。


夢の中で僕は犬になっている。
その世界は未知に満ち満ちていて輪郭がはっきりしない。