旅行行ってきた

というわけで、五泊七日でパリに行ってきた。

旅について

 ずっと、一人で旅行なんてできないと思っていた。そもそも旅行なんて、楽しかったためしがない。いつだってなにかしら嫌なできごとが起こってばかりだった。しかもそれは旅行先とは全く関係のない、多くの場合僕自身もしくは僕と関係する人々との軋轢であり、それが旅行先で必ず火がつくのである。そんなわけで僕は、呪われているのだろうと思っていた。旅なんてでないほうが、穏やかに暮らせる。
 ことに海外旅行は九年ぶりである。九年前のできごとを僕はまだ消化できずにいるが、その時の記憶をずっと忌避し続けてきた。できないものだと思い込んでいた。むしろやってはいけないことだと思い込もうとしていた。傷は深く、今も塞がってはいないし、かさぶたで覆い被せて入るが、中はどろどろだ。
 でもなぜか、時々かさぶたは剥がしたくなるものである。
 あの勢いは何だったのだろうかと、自分でもおかしくなるが、四月のなかば、僕は旅に出ることを決めた。航空チケットが安かったというのは大きな一因である。でももしそうでなかったとしても僕は行っただろう。時期はもう少し遅かったかもしれないが、確実に、粛々と。

 場所はパリだ。パリは特に忌まわしい記憶と結びついている(パリ自体でなにか問題に巻き込まれたことはないが)が、それゆえに僕は再び行かねばならないと思っていた。経験を上書きして、そこを忌まわしいと思わずにすむように。ずっと好きだった場所で、好きだからフランス語も勉強したのに、忌まわしい場所だと思い込んでいるなんてもったいない。
 細かい不具合はあった。行くと決めたのが直前だったので飛行機はともかく、宿は第一希望の地区ではなかった。でも良いところだったと思う。天気予報は行く前はずっと雨の予報、ずっと遠ざかっていたフランス語は怪しいを通り越してほとんどわからないレベルである。でも、準備は楽しかったし、なんだか世界がきらきらしていた。旅に出る前の億劫さより、情報を集めるのが楽しかったし、あれこれ行った先のことを想像するのはおもしろかった。この感じははじめてだ。そして、すごくいい。
 大人になって、いろんなことができるようになった。いろんなことが、実は楽しいことなんだとわかった。僕は旅だってきっとそうだろうと漠然と予想しつつも、なかなか踏み出せなかった。でも踏み出すことにしたのだ。踏み出してよかった。踏み出せてよかった。その担保となる経済力と自信が持てて、ほんとうに良かった。
 ぼくの二十代の前半は、それまでの人生の問題が噴出した数年間だった。その後の二十代後半はその解決に勤しむ毎日だった。二十代の最後に一つの区切りがつけられたような気がする。

すまいのこと


 九年前にパリに行った時も、台所付きのホテル(コンドミニアムタイプ)に泊まればよかったなぁと思ったんだが、色々としがらみがあってそういうわけにはいかなかった。ホテルは確かに朝食が出るし、絶対に食いっぱぐれることはないが、しかし昼間に部屋に戻れなかったり、朝食時間までに置きねばならなかったりなどというのは、時差があるとなかなかつらい。あとホテルは高い。基本一泊100ユーロぐらいじゃないと最低限の設備しかなくてそんなに居心地が良くない(少なくとも九年前は。今も同じだとおもう)
 で、「パリ 台所 宿泊」などで検索した結果短期アパートを借りる事にした。
 探すといくつか仲介してくれるサイトはある。




ちょっと高めだけど広くて綺麗でなにかと便利な部屋が多いのはこちら
http://www.private-homes.com/paris/jp/home?gclid=CNmEiqbugrcCFSElpgodF3YALw

安めが多くて雰囲気があるところが多そうなのがこちら
http://www.ccfj.com/stay/index.html

基本的に不動産屋さんみたいなものなので、荷物運んで〜、あれこれ手配して〜みたいな人は普通にホテルかコンドミニアムホテル取りましょうね。基本的に自分で何でもやる、荷物を七階までエレベータ無しで運ぶのも問題なしという俺みたいなタイプであればかなり楽しいたびになると思います。なにより安いし。70ユーロとかでこんないい部屋は取れないよーホテルじゃ。

今回はパリシェモアを利用してみた。本当は五区のリュクサンブールか二区のモントルグイユが良かったんだが、どちらも埋まっているということで10区に。場所は東駅が近いので空港からのアクセスは割と容易だし、扉はいって中庭がわなので非常に静かでよかった。内装も素敵だったし、一人で住むにはちょうどいい広さだ。しかも窓が大きくて明るい!
若干トイレのドアがあいてきちゃうとかいうのはあるし、仏式四階まで登るのは意外に疲れるが、まぁ雰囲気あるし、で乗り切れる感じである。階段こんな感じなんだよ。ここ登れるならなんでもいいや。

基本的に生活に必要な品はだいたい揃っているが、台拭き(布巾自体は用意してくれている)がないのが少し困った。あと、充電する機材が多いので配線が足りないのと洗面所に電源刺すところがないのでドライヤー使うときにちょっと困ったが、まぁそれくらいは適当にどうにかできるので問題ないかな。とにかく雰囲気があっていいんですよ。内装もすごく素敵だし、置いてあるお皿とかもいちいちいい。なんで俺の部屋、こんなかんじにならないのかなー…


備え付けのお皿。他にもいっぱいある。


以前に泊まったひとが置いていった調味料なんかがあるのもありがたい(部屋によると思うが)。塩とか胡椒とか買うとなると結構かかるしねぇ…誰かが使った食料なんていや!という人でなければ重宝すると思う。あとスライスしたにんにくを乾燥させたのがあって、これはかなり重宝した。ついでなのでみやげ(自分用)に買った。これはいいものだ。小田急OXには売ってそうだが気にしない。

ただ、10区は若干治安的には問題がある(そばのChateau d'Eauあたりが平日昼間は非常に治安が悪いとか、北駅が近いのでやばい感じのエリアが点々とあるとか)が、東駅は割と綺麗だし、アパート周辺からMagenda通りは街路樹植わってて綺麗な感じなので、歩くところに気をつければそれほど恐ろしいことはない。あと自転車使えばまぁ、治安悪い地域もサーっと抜けられるのでそんなに問題ないかな。宿とるのは避けたいけども。

あとはパリシェモアではあんまり扱ってないが、16区のPorte Maillotあたりも静かで綺麗なのでお勧めですね。俺は5区が好きなので今度行くとしたら絶対5区または6区にする。

移動のこと



パリ市内の移動はメトロ使う人が多いようだが、俺はバス派。今回は自転車も使ってみた。ヴェルボ(ヴェルブ?)というやつ。
どうやら市民はNavigoとかいう顔写真付きSuica兼証明書みたいなので基本メトロ・バス・自転車を乗り回しているらしくピッピッと通り過ぎていくが、残念ながら65ユーロもする(デポジットかも)&交渉するのがめんどいので、一週間程度ならParis visit(10.55ユーロ)とかヴェルボ24h券(1.7ユーロ)を購入するんで良いと思う。ヴェルボは150ユーロもデポジットでとられるが…(もちろん返ってくるが)
今回は5日しかいないのでヴェルボにしたけど、いかんせん重装備型ママチャリなので重い。あまりにも重いので右足を痛めた。二週間くらいいるなら自分のクロスバイク持ってったほうが軽くて楽だな。まぁそんなに休み取れないですけども…。









で、自転車で走ってみた感想



よい。
いや、良いのはわかってたんだが、やっぱりよい。自転車に乗るとだいたい町の全景が頭の中で描けるようになるし。徒歩よりずっと行動範囲が広がる。あと30分間だけなら乗り放題だが、30分以内に見つけられたポートが全部埋まっているということが非常によくあり、出る人と入る人の間に妙な連帯感というかコミュニケーションというかが生まれる。結構地元の人も使ってるっぽいし、自転車のポートを椅子代わりに使ってるパリジェンヌが相当多いので面白かった。

ただ、やはり交通ルールみたいなのは難しい。そもそも一方通行が多い(自転車は一通でもかなり通れるようになっているところが多いが)のと、メインストリートを走るのは車も運転がかなり荒いのでやや怖い(基本的にみんな優しいので止まってくれますが)。あと下手に大きな通りに出ると道路を突っ切るのがかなり怖い場合がある。あと最初のうちは基本まっすぐにしか走れない(交差点怖い)。まぁ二段階右折するとか歩いて横断歩道渡るとかすればいいっちゃいいんだけど、なかなかね…そのうち慣れてきて人差し指あげて渡る(Pardonの意。多分。みんなやってるので真似をしてたけど、だいたい通じてるっぽい)ようになりますけどね!あと道に迷うとまじで帰れなくなる(土地勘ないので)ので、どうしようもなくなったら(どうしようもなくなる前に)バスなりメトロなりに乗って帰ったほうが良さげ。

基本的に情報はネットから仕入れているが、一冊だけ買った。これ結構良かった。むかし東京版のこんなかんじのやつ持ってたけど、自転車で走るときはこういうののほうが便利なんだよね。まぁでも完全初心者だったら普通に地球の歩き方とか買ったほうがよいのかも。

ここでおすすめされてたGalerie Vero-Dodatなどとても良かった。なんつー雰囲気なんだ。

で、おすすめのバスだが


日本人は滅多にバス使わない(というか東洋人観光客でバスを使ってる人は少ない気がする)が、市内バスはかなりおすすめ*1
乗り方は別にそれほど難しくなく、Paris visit買って、乗るときに運転手にBonjourとあいさつして、運転席脇の機械に券を突っ込めばOK。観光客の多い場所だと、券を見せるだけでOKだったりするが、観光客の少ない路線だと機械に突っ込まないと怒られる。あと稀に買ったばっかりなのになぜかちゃんと認識されないことがあるが、運転手がチッ、これだから観光客はいやなんだという顔をしつつ載せてくれるので問題ない。券が認識されないのは俺のせいじゃないっつーの。ていうかいいのかYO!
基本的にパリのひとは、こいつ言葉通じてないなと思ったらお金足りなくても物くれたりする。いいのかYO!とよく思う。というかno problem?ときくとoui! Au revoirといわれる。さっさと行けという意味である。なお店員が中国人(発音が非常に明瞭なのでわかる)の場合はあと0.1ユーロ!などとふつうに怒られる。

おすすめの路線は

  • 89:Gare de d'Austerllitzから植物園脇を通ってパリ第7,8大学の前を通り坂道を登りながらアンリ第四世高校の脇を抜けてパンテオンを素通りし、リュクサンブール公園の方へ行く。坂道通るのがすごく楽しい
  • 38:モンパルナスから北駅まで行く。5区の綺麗な通りを走る
  • 72:セーヌ沿いをずっと走る。観光客が多いのでもたもたしてても運転手に怒られない
  • 73:凱旋門の周りをぐるぐる回って(楽しい)シャンゼリンゼからコンコルド広場を抜けオルセー美術館で終点
  • 82:エッフェル塔のそばを走る。観光客も少ないしひとも少ないし、16区の閑静な住宅街を走るわりと落ち着いた路線

用もないのに何度も乗った。特に89。あの坂道登ってくのが楽しいんだよなー。あとBbかなんかがルーブル美術館の中突っ切ってくのでびっくりした。あれも面白かった。意味もなく乗るの楽しいので一日くらいバスに乗るといいと思うよ!

治安とか


以前より治安は良くなってる気がする。悪いところは非常に悪いけど、少なくとも観光地でいつの間にかひとの背後に立っているひととか目付きの悪いひととかだいぶ減ってる感じがした。ただまぁ本格的なバカンスシーズンではないせいかもしれないし、落書きは以前より増えてるので、行くとこ行けばやはり危ない、かも。道に捨ててあるゴミとかも減った気はするけどね。だがChateau d'Eau、お前はだめだ。ゴミどころか道端に寝てるひとだらけじゃねぇか。

8月9月のバカンスシーズンにしか行ったことがなかったが、今回はじめて初夏に行ってみたが、すごく良かった。朝はさすがに寒い(5度くらいまで下がる)ので地元の人達はコート着てるが、昼間は20度くらいまで上がるので半袖で歩いている人もいる(特に観光客)ような陽気だ。まぁ、厚手のパーカーとマフラーがあれば特に問題には感じない。パーカー着てる人少ない&あんまりよろしくない人たちが基本パーカー着てるので、いい店入るときはちゃんとジャケットとか着ていたほうがよいと思いますが。

あと、今回うっかりしてて5/1がメーデーであることを忘れて4/30に着いてしまったんだが、祝日はまじで店が開いていない。駅に行けばスタンドは空いてるのでどうにか食うものには困らない(1区とかのカフェは普通にやってます)が、バカンスシーズン並だった。人少なくていいけどね。逆に日曜は意外に店が空いててびっくりした。前はもっとしまってた気がするんだが、最近そうでもなくなったそうだ。
日本と違ってコンビニはないが、駅にコンビニみたいなところがあるのと、franprixとかいうスーパー(デイリーヤマザキみたいな感じ)が日曜祝日も営業(店舗によっては休んでいる)かつ平日も21:00くらいまで営業しているらしいので、そんなに困らなかった。monoprix(ヨーカドーみたいな感じ)も増えてたし、なんだかんだと便利になったなー。少なくとも東京の下町と同じリズムで生活はできる感じ。東京の下町も日曜はだいたいしまってますからね!あいてるのコンビニだけ。観光地になるとさすがに開けてるところも増えるけど相変わらず日曜はやってないところも多いし、それに慣れてるせいかそんなに不便には感じなかった。

もうちょっと続く。

場所ごとの写真と文章は別個http://pigya.hotcom-web.com/wordpress/ の方にうpします。

*1:夜は危ないのでやめたほうが良いらしい