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眠れなくて、ただベッドの上で横たわっていた。深夜でも変わらず輝き続けるクリスマスイルミネーションが窓枠を染めている。
眠れないのは今に始まったことじゃない。きっとこうなるだろうとわかっていたから、日本から睡眠導入剤だって持ってきた。でもそれも、もう少しで底がつきそうだ。異国のドラッグストアでシャンプーを買うことくらいなんでもない。風邪薬だってなんとなくわかる。けれども、睡眠薬は見つけられない。見たことのない単語の羅列。効能の違いのわからないいくつものパッケージ。何かをアピールする簡潔なフレーズも、それが僕の目的にかなうのかどうかわからない。うんざりする。気力を保つのさえもままならない。
それで、ぼくはベッドの上に横たわっているのだった。明け方のほうが近い時間になってしまえば諦めもついて、ただ疲れないためだけに横になっている。
それでも、日本にいる頃より夜中が寂しくない。日本はちょうど昼間の時間帯で、ネットのコンテンツは次から次へと更新される。時間を持て余した人間が眺めているには十分すぎるほどの情報が流れ、そして元気だ。健康で病んでいない。眠れないと、焦らなくてもいい。だってみんな眠ってないから。


うつらうつらとする眠りの向こうから、足音が聞こえる。音は僕の部屋の前で停まり、それから深夜の静寂を打ち破る無遠慮なエレベータの到着音がする。あぁ、朝が来たと僕は目をつぶったまま思った。