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ただ道を歩いているだけなのに、突然中指を立てられることがある。なにごとかと思っていると彼らは笑いながら通りすぎる。あぁ、僕は記号なのだなと納得する。他の客に比べ横柄な態度を見せる店員、しれっと順番を抜かす係員、手を上げて合図をしても止まってくれないバス、小銭をちょろまかすレジ係。それくらいなら大したことはない。僕の英語は拙くて、見た目は幼くてしかもどこからみてもアジア人だ。アジア人の記号として消費されているのは、アジアから遠く離れた国ではしかたのないことだ。いまでもまだ世界各地に領地をもつ帝国人が無意識化に優越感をにじませているのは驚くに値することではない。


でも、僕はなぜか中国人は嫌いだと告白されると傷つくのだった。善意の側をかぶった人種差別を恐ろしく思うのだった。それはたぶんきっと、僕は女であるがゆえの抑圧を強く感じ続けてきたからだろうと思う。他の女とは違うだろうと、名誉男性の服を着せられそうになってきたからだと、その怖さを身にしみて理解しているからだろう。どこへ行っても僕は境界に立っている。