24. その効果はまるでスポットライト。周辺光量落ちを活かそう

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こんにちは。また春が近づいていますが、みなさんいかがお過ごしですか?(注:この記事は2016年に書かれたものです
冬の間は寒いし厚着をしているし、でなかなか写真を撮れない、でかけてもあまり自由に動けない冬ですが、あたたかい春はもうすぐです。今のうちにカメラのメンテナンスをして、春を待ち焦がれましょう。

さて、今回は周辺光量落ちのお話をしたいと思います。

周辺光量落ちというのは、写真の四隅が少し暗くなる現象のことです。古いレンズなどは使っているレンズの枚数が少なかったり光学的性能がよくなかったりするので、開放時にこういった現象が起きやすいといわれています。つまり周辺光量落ちはあまりいいことではないとされているのです。
ですが、Instagramなどをはじめとした写真加工アプリなどではかならず、四隅をちょっと暗くする効果がついています。廉価なトイカメラは周辺光量落ちをするものが多いので、トイカメラが流行った結果、そのほうがおしゃれだというようになってきたからです。確かになんとなく雰囲気のある写真が撮れますよね。

ただしこの周辺光量落ち、やみくもに使ってもいいんですが、狙って使うともっともっと劇的な効果が狙えます!
どのくらい違うか、例と一緒に見ていきましょう。

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左が撮って出し、右が周辺光量を落としたもの

ぱっと見て印象が少し違いますね。では具体的にどこが違うのでしょうか?

左は背景の草むらがボケてうつっています。これはこれで十分にぼかしているので模様としてありなのですが、彼岸花の華やかさに対して若干ノイズ気味になってしまっています。
対する右はこの草むらのボケのうるささが解消されています。

「写真は引き算」という言葉はみなさん小耳にはさんだことがあるかと思いますが、通常引き算をする際は「邪魔なものを片付ける」「邪魔なものを光で飛ばす」「邪魔なものをぼかす」という方法を使います。ですが、どうしても邪魔なものをどかせないとき、光が足りない時、ぼかしてもノイズになってしまったときもあるんですね。そういうときはこの例のように周辺光量落ちを使ってみましょう。
周辺光量落ち風なエフェクトは後からもかけられますので、「このボケうるさいなぁ」とか「端っこのほうに邪魔なものが映っていたけどトリミングするとバランスが崩れちゃうよ」なんてときはちょっと試してみてください。案外どうにかなるかもしれません。

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日陰の彼岸花。左は撮って出し、右は周辺光量を落としたもの
続いても彼岸花の作例です。
この光景を見た時の状況と比べると右のほうが実感にちかいです。つまり、「木漏れ日の下に彼岸花がさいていて、日が当たっているところ以外は暗い」という状況ですね。実際の光の量はレンズが写し取ったもののほうがただしいのですが、人間は主題を明るく、それ以外はあまり見ないという特性があるので、スポットライト的な光が当たっている環境では右の写真のように感じてしまいます。
この感覚を表したい場合は周辺光量落ちを有効に使いましょう。


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左が撮って出し、右が周辺光量をおとしてややコントラストをあげたもの
さて、続いては野球のバックネットです。
え? この二つ同じなの?と思われるかもしれませんがまったく同じ写真です。かなり印象が違いますね。
この理由はネットの格子が目にうるさいせいです。特に左はネットの格子が平板的になっているため、視線がつい全体的にさまよってしまいます。この写真では中心のAの文字が書いてあるところに視線を集中させたいので、それ以外のところはやや暗くして注意をひかないようにしてしまいましょう。こういう時こそボケそして周辺光量落ちが役に立ちます。



というわけで、周辺光量落ちをうまく使うと写真の印象が一変するよ、というお話でした。いかがでしたでしょうか?
ちなみにこの周辺光量落ち、絞りを開放にした場合に出やすくなります。ただし、フルサイズ用のレンズをAPSフォーマットのボディで使った場合などは周辺光量落ち部分がトリミングされてしまいますし、最近のレンズは光学的な性能がよいので周辺光量が落ちにくくなっていたりもしますが、そんな時はあとから効果を追加しましょう。スマートフォンなどの画像加工アプリでは「ビネット」という名前になっていることが多いかと思います。
ほんのちょっとの手間で雰囲気が一変すれば楽しいですよね。ぜひ、使ってみてください。
では、次回もお楽しみに!