爪の話

この間、姉の結婚式があったのですぐ下の妹に久しぶりに会った。やつは順調にOLさんに成長している。うちの家系の特徴で童顔ではあるが、まぁたぶんきれいなおねいさんといっていい部類の。
何の流れだったか、爪の話になった。僕は爪には何も塗らない。塗る必要性を感じない。別に汚いわけではないし、爪を切りにくくなるし、なにより爪の上に何か塗られている感覚が好きではない。だから何もしない。
妹の爪はきらきらしていた。きれいにグラデーションがかかって、ネイルストーンがちりばめられている。妹は言った。「でもこれやってくれた人あんまりうまくない」。いいじゃないきれいだし、といったけど妹はなんだか不満そうだった。一番下の妹が隣で、自分で塗ったマニキュアとそれを見比べて、グラデーションかけるのとかどうやってやるんだろうと呟いていた。自分でやるとむらができるよねぇなどと僕は一番下の妹と話した。
すぐ下の妹が僕に何で何も塗らないのかと尋ねたから、僕は必要性を感じないからだと答えた。必要性を感じないどころか、爪が切りにくくなるし、どうがんばってもむらができるし、人にやってもらうのは肩がこるからつらい。それに爪だけきれいにしててもほかのところが男の子みたいじゃどうにもアンバランスだ。この年になれば自分のキャラというのもわかってるし。妹は半分くらいは聞き流して、「爪、割れたりしないの」と言った。僕はぜんぜん、と答えた。二人の妹が同時にえ!と言った。僕も負けずにえ!と答えた。
妹が言うには爪が割れるからマニキュアを塗るのだそうだ。見せてもらうと確かに爪が広く、薄く、そしてやわらかい。その上にコーティングをして強度を持たせているようだ。重ね塗りをすればするほど、強度はまし、爪が割れにくくなる。うまくない人がやったりむらができたりするとそこから割れてしまう。という。ネイルストーンはおまけみたいなもの。ということだった。一番下の妹はそこまでではないし、実際に塗るのが好きなだけというところもあるけれど、塗ったほうが爪は割れない、と言った。そして二人でまじまじと僕の爪を見た。僕の爪は硬く、大きさもあまり大きくない。つめきりできるのもやや苦労するほど、爪自体が厚い。そして磨いていないけれど段差がほとんどついていない。
確かにいらないね、と妹たちは口々に言った。逆にマニキュアを塗ると段差ができるからいやだと僕は言った。時々はげかけたマニキュアが引っかかって爪がかけるし、とも。
おしゃれは防御である。防御は過剰すぎると自身を傷つける。まぁそういうことなんだろう。