昨夜、僕がそうしていたように雨音に耳を傾けながら湿った空気をひっそりと受け止めている背中を目にした。
忙しさにかまけてともすれば思い出すことすらないその感触を、掌に忘れない繊細さを思った。
うっかり人に見られる可能性の高い職場で、その行動をやめない強さを思った。
その背中は何も語らない。僕の足音に気付いて不思議そうに振り返ったあの顔を僕は。
開け放した窓から心を落ち着かせる風が忍び込んでくる。雨音は少し遠くなったようだ。