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ぼんやりと昔のことを考えていて、なぜ音楽は好きなのに楽器を弾くのが嫌いになったのかがわかった。
僕は太く響くG線の音が好きだ。その音をどうやって響かせるかを研究し、合う曲を弾くのは楽しかった。でも人は言う。違う。そこは軽やかにあるいは歌うように。それではおもすぎる。その抽象的な概念を当時の僕は理解できなかった。音楽の世界は完全な一子相伝で音程以外のすべてのものは主観に委ねられている。感覚が一致すれば幸いだ。一致しなければ不幸だ。残念ながら僕は不幸な方だった。
もしかすると写真を独学で上達させることにこだわっているのは、非言語下でそれを知っていたからなのかもしれない。僕は本を読まず、師を仰がず、ただひたすら撮り続けてきただけだ。驚くほどカメラについて知らないし、写真について語れないし、写真家の名前も挙げられない。デジタル現像も試行錯誤だし、結局一番信頼できるのはPhotoscape、ようするにほぼ撮って出しだ。それで満足できているのだから、たぶんこれからもこのままだろう。