頭の良さについてやっぱり考えてしまう

廃人化している間どんどん頭が腐っていくのを感じていた。日々それは恐ろしい速さで思考が抜け落ちていく。考えていることがあいまいになり、つぎはぎだらけになり、散漫になる。うれすぎた果実が醜い汁を滴らせるように、出てくるものは醜さ以外にない。体が手が、顔が、視線が、動かなくなる。わからなくなる。規律正しく動き美しい模様を描いていた世界がのっぺりとした壁になる。何も感じなくなる。何もわからなくなる。何もかもなくなる。なくなっていく。

痴呆の初期はそういう感覚なのだろうかと思ったりする。幸いにも半年間規則正しい生活と負荷にならない程度の刺激とそれに対する評価のフィードバックを受けて、廃人化していた頃よりはましになった。それでもまだ、思考はさびついている。自由に動かすことができない、自分の体なのにその動きが次にどうなるかわからない。そういう恐怖にまとわりつかれながら、それでも毎日を突き進んでいく。

元に戻れるだろうか。それとも元に戻ることは二度とないのだろうか。失ったものは多すぎる。得たものも確かに多いけれど、そのすべてと合わせて失った期間は僕にとって害でしかなかったのだろうか、それとも宝になるのだろうか。わからない。