D90 + Nikkor 50mm

たとえば。
たとえば、という言葉を発しかけて僕は口ごもる。その先を続けることが僕にはできない。たとえばの先につながる未来を僕は描けない。
何気ない光景を見るたびに、誰かの些細な日常を見るたびに、それをいいなぁと思うたびに、眩しさに目を細めるたびに、僕は足を踏み出すことをためらう。怖くなって泣きそうになる。その未来はとても遠いところにある気がする。手が届かないほどとおくにある気がする。僕はまだ目の前にある道を直視することができず、その未来を予想することができない。目の前にある道の先はかすむほどに遠いのか、それとも僕の目がただ悪くなっただけなのか、わからなくなってたたずんでいる。単純なことが、些細なことが、どうしてこんなに難しいんだろう。どうしてこんなに遠いんだろう。どうして。

でも。絶望することはたやすいが、希望を手放してはいけない。その道のりの遠さにあきらめることはいともたやすいが、いつかたどりつけることを信じるのをやめてはいけない。0かそうでないかわからない可能性をつぶすのは最後の最後でいい、僕自身の掌のうえで朽ちていくのを眺めればいい。それまで僕は信じることをやめたくない。僕が信じた光を忘れたくない。